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新潟家庭裁判所 昭和48年(家)842号 審判

昭和四八年(家)八四二号事件

申立人亡大石和代承継人 島田君子 外五名

相手方 大石ミナ 外一〇名

昭和五二年(家)二八六五号事件

申立人 島田君子

相手方 山川リサ 外四名

主文

一  申立人島田君子の昭和五二年(家)第二八六五号遺産分割申立事件を却下する。

二  被相続人亡大石和夫の遺産及び遺産管理者弁護士○○○○管理の保管金を以下のとおり分割する。

1  申立人承継人島田君子・同山川リサ・同井口信夫は、別紙目録一記載の(15)・(16)の各土地及び同目録二記載の(4)・(5)の各建物を各自平等の持分をもつて共有取得し、保管金については同人等はいずれもこれを取得しない。

2  申立人承継人田口良夫・同井口文子・同井口忠夫・相手方大石ヨシ・同大石春子・同大石昭一は、別紙目録一記載の(10)ないし(14)・(17)の各土地を、その持分につき、申立人承継人田口良夫において一〇〇〇分の一七五、同井口文子・同井口忠夫においていずれも各一〇〇〇分の八七、相手方大石ヨシ・同大石春子・同大石昭一においていずれも各一〇〇〇分の二一七をもつて共有取得し、保管金については申立人承継人田口良夫・同井口文子・同井口忠夫・相手方大石ヨシ・同大石春子等はいずれもこれを取得しない。但し申立人承継人田口良夫・同井口文子・同井口忠夫・相手方大石ヨシ・同大石春子は、相手方大石昭一に対し、別紙目録一記載の(10)ないし(14)の土地のうち同目録二記載の(1)ないし(3)の建物の敷地部分をその共有持分にしたがい本審判確定の日から五年間無償で使用させるものとする。

3  相手方大石ミナ・同山田クニエ・同田沢カヨコは、別紙目録一記載の(1)・(2)・(5)・(6)の各土地を各自平等の持分をもつて共有取得し、相手方田沢カヨコは同目録一記載の(3)の土地を単独で取得し、保管金については同人等いずれも金一、〇九四、七八八円をそれぞれ取得する。

4  相手方大石アケは、別紙目録一記載の(4)・(7)・(8)・(9)の各土地を単独で取得すると共に、保管金については金一、〇三七、七四二円を取得する。

5  相手方大石昭一は、別紙目録二記載の(1)ないし(3)の建物及び別紙目録六記載の電話加入権を単独で取得し、保管金については金一五八、四〇〇円を取得する。

6  相手方亡大石栄吉承継人大石夏子・同大石秋雄・同大石幸夫は、いずれも何も取得しない。

三  申立人承継人島田君子・同山川リサ、同井口信夫は相手方大石アケに対し、いずれも金三七、一八三円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員をそれぞれ支払え。

四  相手方大石春子は相手方大石アケに対し、金四六三、七四九円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

五  相手方大石昭一は、申立人承継人田口良夫に対し金五九、一六四円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を、同井口文子・同井口忠夫に対しいずれも金九〇、二三八円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を、相手方大石アケに対し金三、二八七、一二七円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を、相手方大石ヨシに対し金五三六、二五二円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

六  本件に関する全手続費用中、証人山下幸二に支給した分は相手方ミナ、同金実に支給した分は相手方大石昭一、鑑定人○○○○・同○○○○に支給した分のうち、その一二五〇分の三六八は申立人承継人島田君子・同山川リサ・同井口信夫・同田口良夫が各自平等の割合で、その一二五〇分の九二は申立人承継人井口文子・同井口忠夫が各自平等の割合で、その一二五〇分の六九〇は相手方大石ミナ・同山田クニエ・同田沢カヨコ・同大石ヨシ・同大石昭一・同大石春子が各自平等の割合で、その一二五〇分の一〇〇は相手方大石アケの各負担とし、その余は各自の負担とする。

理由

一  昭和四八年(家)第八四二号事件の手続進行経過とその瑕疵及び同五二年(家)第二八六五号事件申立の当否

昭和三九年一二月二三日付家事調停申立書、同四一年六月一五日・同年一二月一九日・同四六年一二月六日付各調停調書(不成立)、同四三年一月一九日受付日の上申書、同四〇年一月四日(一通)・同年三月三日(一通)・同四三年三月二五日(五通)・同年五月一二日(一通)・同四八年三月二七日(一通)各受付日及び同五二年一〇月三一日付の各委任状、同四五年三月二日付・同五二年一一月一日付各辞任書、同四六年一二月二九日付審問調書、同四七年三月二六日付審判書、同四七年四月四日・同年同月一二日・同年同月一四日付各即時抗告申立書、同四八年三月一日付決定書、同五二年一一月一日付審判申立書、同年一一月二七日付上申書、同五五年一月二四日・同年同月二五日付各追認書、同三九年一二月二一日付(筆頭者大石栄吉・山田利三郎・田沢平六・大石昭一各一通)・同四二年一一月二日付(筆頭者大石和夫・山川吉次郎・島田一栄各一通)の各戸籍謄本、同四二年一一月四日付戸籍謄本(筆頭者井口ミネ)、同三九年一二月二三日(前戸主大石又次)同四三年四月五日(前戸主田口コウ)付各原戸籍謄本、同四二年一一月二〇日(前戸主井口与一郎)同四三年四月五日(筆頭者田口アサ)付各除籍謄本、同四二年一一月一八日(筆頭者井口ミネ二通)同四三年四月二四日(筆頭者田口良夫)付各戸籍抄本、及び申立人承継人島田君子(昭和五二年一一月一〇日の期日)・同山川リサ(同年同月一八日の期日)・同井口信夫(同年同月一〇日の期日)同井口文子(同年同月一八日の期日)・相手方亡大石栄吉承継人大石幸夫(同年一二月二三日の期日)の各審問結果を総合すると、本件昭和四八年(家)第八四二号事件は、申立人大石和代(以下申立人和代という)が相手方大石ミナ・同大石栄吉・同山田クニエ・同田沢カヨコ・同大石アケ・同大石ヨシ・同大石春子・同大石昭一(以下相手方ミナ・栄吉・クニエ・カヨコ・アケ・ヨシ・春子・昭一という)を相手方として当庁に対し、昭和三九年一二月二三日被相続人を大石和夫(以下被相続人和夫という)とする遺産分割の調停の申立(昭和三九年(家イ)第二八二号)をしたことに始まるが、同申立は同四一年六月一六日昭和四一年(家)第一八四六号事件として審判手続に移行したところ、同審判手続進行中の昭和四二年一〇月二一日申立人和代が死亡したため、その地位を申立人承継人島田君子・同山川リサ・同井口信夫・同田口良夫・同井口文子・同井口忠夫(以下申立人承継人君子・リサ・信夫・良夫・文子・忠夫という)が当然承継し、同君子・リサ・信夫・文子・忠夫においては昭和四三年三月二五日、同良夫においては同年五月二一日弁護士○○○○に対する委任状を当裁判所に提出(但し同弁護士は申立人承継人良夫の代理人であることを昭和四五年三月二日辞任した)して本件手続に参加するようになり、また昭和四三年二月二三日相手方栄吉も死亡したため、相手方ミナ・相手方亡栄吉承継人中島夏子・同大石秋雄・同大石幸夫(以下相手方ミナを除いて、相手方亡栄吉承継人夏子・秋雄・幸夫という)がその地位を当然承継し、特に本件手続に参加するようになつた昭和四六年一二月二四日の時点でも相手方亡栄吉承継人幸夫(昭和二九年一〇月九日生)は未成年者であつたため、同人の母である相手方ミナが同幸夫の法定代理人親権者として同日以降本件手続に関与し、同四七年三月一六日昭和四一年(家)第一八四六号事件につき審判があつたこと、しかし同審判に対する即時抗告の申立があつて同事件は東京高等裁判所昭和四七年(ラ)第三四〇号事件となり、同四八年三月一日同裁判所の決定により・上記審判は相手方ミナが相手方亡栄吉承継人幸夫の法定代理人として利益相反行為をする手続の中でなされたことを理由に破棄差戻となり、再び当裁判所に昭和四八年(家)第八四二号事件として係属するに至つたものであること、しかも同事件の手続は、申立人承継人君子・同リサ・同信夫・同文子・同忠夫においては、昭和四一年(家)第一八四六号事件につき同四三年三月二五日、同四八年(家)第八四二号事件につき同四八年三月二七日、申立人承継人良夫においては昭和四一年(家)第一八四六号事件につき同四三年三月二五日いずれも弁護士○○○○をその手続上の代理人として選任し、また相手方ミナにおいては昭和四〇年一月四日、同栄吉においては同年三月三日いずれも弁護士△△△△△を昭和四一年(家)第一八四六号事件の手続上の代理人として選任したため、弁護士○○○○の上記事件においての代理行為は、申立人承継人君子・同リサ・同信夫・同良夫(但し同人については昭和四五年三月二日同弁護士が辞任するまで)・同文子・同忠夫相互間で、弁護士△△△△△の上記事件においての代理行為は相手方ミナ・同栄吉(但し後記のとおり死亡した昭和四三年二月二三日まで)相互間で、いずれも双方代理行為となつていたこと、昭和五二年(家)第二八六五号事件は、上記事情下で、申立人承継人君子が更に弁護士○○○○を代理人に選任したうえ、同弁護士の代理行為によつて、被相続人を申立人亡和代とし、同人の昭和四八年(家)第八四二号事件の遺産に対する相続分を遺産分割の目的と定め、相手方を申立人承継人リサ・同信夫・同良夫・同文子・同忠夫として審判を求めた事件であること、しかし、上記利益相反行為については昭和五二年一二月二三日相手方幸夫において、双方代理行為については、申立人承継人君子・同信夫においては昭和五二年一一月一〇日、申立人承継人リサ・同文子においては同年同月一八日、申立人承継人忠夫においては同年同月二七日、申立人承継人良夫においては同五五年一月二四日、相手方ミナにおいては同年同月二五日、それぞれ有効なものとしていずれも追認していることが認められる。

そこでまず上記昭和五二年(家)第二八六五号事件の当否について検討するに、上記事実によると、同申立は、昭和四八年(家)第八四二号事件の申立人和代の審判手続上の地位を承継した君子が、同事件で審判の対象となつている遺産を再び審判の目的とする申立であること明らかであるから、これは同一事件についての二重の申立であり、したがって同申立は民事訴訟法第二三一条を類推適用してこれを却下することにし、以下昭和四八年(家)第八四二号事件について検討することにする。

二  被相続人和夫の生活歴及び相続人の範囲並びに相続分

前掲各戸籍謄本・各除籍謄本・各戸籍抄本・昭和四七年一月七日付遺産分割共助事件調査報告書・昭和四〇年一月一三日付調査報告書・昭和四一年(家)第一八四六号遺産分割事件照会書に対する回答と題する書面・新潟市○○町×丁目×××番地大石和代殿にかかる昭和四一年度分の不動産所得についてと題する書面・証人山下幸二・同山村広次・同高石一郎・同小川鉄夫(二回)の各証言、申立人承継人リサ(二回)相手方ミナ(四回)・同カヨコ(二回)・同アケ(三回)・同ヨシ(三回)・同春子(二回)・同昭一(四回)の各審問結果を総合すると、被相続人和夫は、明治二七年一月二五日大石又次同タニ夫婦の長男として出生し、大正三年七月六日小川ナツと婚姻し、同女との間には、大正四年四月一九日に長男一太郎・同八年三月二四日に長女で相手方であるミナ・同一〇年三月一四日に二女で相手方であるカヨコ・同一三年七月五日に三女で相手方であるアケ・同一五年一月二日に四女で相手方であるクニエが生れたが、同ナツは大正一五年一一月二一日死亡したため、昭和二年五月三〇日佐山タミと再婚し、同女との間では昭和三年三月六日に相手方である春子・同九年五月二日に相手方であるヨシが生れたこと、しかし同一三年三月三〇日に独り息子であつた上記一太郎を亡くし、また同二一年九月二五日上記タミと協議離婚をしたことから、上記相手方ミナを自己の農業経営に対する後継者と考え、同二二年五月一〇日同女と婚姻した相手方亡栄吉を養子とする縁組を結び、本籍地で同夫婦と同一世帯構成で暮すようになつたこと、ところが後記のとおり相手方亡栄吉同ミナ夫婦との感情的対立が生じて昭和三一年四月同夫婦を自己のもとから追い出し他所に住まわせるようになつたため、同三二年一一月五日相手方ヨシと婚姻した相手方昭一を養子に迎えて本籍地で上記栄吉夫婦の場合と同様同一世帯の生活をはじめたものの、間もなくして同昭一とも感情的対立が生ずるようになり、加えて相手方ヨシの高校時代の恩師である山本和吉らの仲立ちで知り合つた申立人亡和代と昭和三三年四月二一日婚姻し同居生活を始めるや、上記相手方ヨシ・同昭一夫婦からその婚姻につき猛烈な反対を受けて両者間の対立その極に達し、同三六年五月今度は自から申立人亡和代と相手方春子を連れて身を引き、新潟市○○町所在の借家を経て同市○○町×丁目×××番地×に所在する申立人亡和代の親戚の持家を借受け、同所でアパート経営の収入で生活をはじめ、申立人亡和代の看護を受けて同三九年五月二七日遺言を残すこともないまま死亡し本件相続が開始したこと、しかも申立人亡和代と同人の本件承継人との身分関係をみると、申立人亡和代は、井口幸夫同マキ間の実子である点で申立人承継人君子・同リサ・亡井口昌平(昭和一二年四月二七日死亡)・亡石川ヨネ(同三四年四月二二日死亡)と実兄姉妹の関係にあるほか、亡田口コウ(後記田口アサより前に死亡)の養子になつていたので同様に同コウの養子となつていた亡田口アサ(昭和三八年二月一二日死亡)とも姉妹関係にあるほか、申立人承継人文子・同忠夫は上記昌平の子であり、同信夫は上記ヨネの子であり、同良夫は上記アサの養子であるから、同文子・忠夫・信夫・良夫の叔母に当り、前記承継は正当であることが認められる(以上の認定に対しては、相手方昭一は、被相続人和夫と申立人亡和代の上記婚姻はその届出が和夫に無断でなされたものであるから無効である旨主張するけれども同主張を認めるに足る証拠はない)。したがつて以上の事実からすると、被相続人和夫の相続人は、相手方ミナ・同亡栄吉・同カヨコ・同アケ・同クニエ・同ヨシ・同昭一・同春子及び申立人亡和代であり、同亡和代の相続人は、申立人承継人君子・同リサ・同信夫(但し代襲相続人)同良夫(但し代襲相続人)同文子及び忠夫(但しいずれも代襲相続人)であり、相手方亡栄吉の相続人は、相手方兼相手方亡栄吉承継人ミナ・相手方亡栄吉承継人夏子同秋雄同幸夫であり、また申立人亡和代及び相手方亡栄吉の生前における各相続人の法定相続分は、申立人亡和代につき三分の一、相手方亡栄吉・同ミナ・同クニエ・同カヨコ・同アケ・同ヨシ・同春子・同昭一においていずれも一二分の一であるが、申立人亡和代死亡後の同人の相続人らの相続分は、申立人承継人君子・同リサ・同信夫・同良夫についてはいずれも一五分の一・申立人承継人文子・同忠夫についてはいずれも三〇分の一であること明白である。

三  本件遺産の範囲・分布利用状況・相続開始時及び現在時における評価額

別紙目録一記載の(1)ないし(17)及び同目録四記載の(1)・(2)の土地並びに同目録二記載の(3)・(4)の建物を表示する各登記簿謄本(但し目録一の(7)・(10)ないし(17)・目録二の(3)・(4)・目録四の(2)については二通他は一通)、調査嘱託書について題とする書面、農地法五条許可書、昭和五五年四月五日付報告書と題する書面、鑑定人○○○○(昭和四〇年一一月二五日と日付記載のもの)及び同○○○○(同五三年二月二〇日付)の各鑑定結果、証人西山太三郎・同金実の各証言、前掲相手方ミナ・同カヨコ・同昭一の各審問結果を総合すると、被相続人和夫の本件手続において分割するに価すると共に当事者において分割を求める遺産は、不動産については上記目録一記載の各土地と同目録二記載の各建物であり、それ以外の物件では別紙目録六記載の電話加入権であるが、この外に本件相続開始当時不動産登記簿上被相続人和夫の所有名義となつているものとしては上記目録四及び五記載の土地が存在すること、しかし、同目録四記載の土地は被相続人和夫が昭和三一年一二月頃相手方カヨコに対し住宅建築敷地として贈与したものであり、同目録五記載の土地は上記和夫が昭和三二年一一月一五日頃申立外西山太三郎に売却したものでいずれもその物件自体本件遺産でないこと、次いで上記遺産で土地の分布状況をみると、別紙目録一記載の(1)と(2)・同目録一の(3)と別紙目録四記載のもの・上記目録一の(7)ないし(9)及び同目録(10)ないし(17)はそれぞれ一個の集団で隣接しているものの、目録一記載の(4)ないしは(6)はいずれも第三者所有の土地中にいわば孤立した状態で存在する土地であり、目録二記載の建物中、(3)の建物は相手方ヨシ・同昭一夫婦と相手方春子が居住利用しているが、同記載の(1)・(2)・(4)の建物は貸屋として利用されていること、またその評価額は、目録一・二・六各記載の当該物件評価額欄記載のとおりであり(但し同目録一の(9)と(17)の土地の昭和三九年五月二七日現在における価額は、鑑定人○○○○の上記鑑定結果によると評価不能となつているが、鑑定人○○○○の上記鑑定結果によると、目録一の(9)の土地の一平方メートル当りの単価は同目録(8)の土地の同単価の約三割に相当すること明らかであるので同(9)の土地の昭和三九年五月二七日現在の価額は同(8)の土地の同年月日の単価に〇・三を乗じてその総面積の価額を算出したものであり、目録一の(17)の土地の一平方メートル当りの単価は同目録(10)ないし(13)の土地の一平方メートル当りの単価の八割六分に相当すること明らかであるので同(17)の土地の昭和三九年五月二七日現在の価額は同(10)ないし(13)の土地の同年月日単価の平均価額にその面積一四二一四と〇・八六を順次乗じて算出した)、したがつて本件遺産の、本件相続開始時を基準にした総価額は金四六、二四一、七九七円であり、現在の時価総額は金二八二、九七五、三四〇円であることを認めることができる。

四  和夫の相続人亡栄吉の特別受益及び寄与分関係

別紙目録三記載の(1)ないし(10)を表示する各登記簿謄本・別居生活並に財産贈与に関する契約書と題する書面・昭和四二年四月一一日付電話要旨と題する書面、鑑定人○○○○の鑑定結果(日付記載のないもの)、前掲証人山下幸二・同小川鉄夫・同山村広次・同高石一郎の各証言、前掲相手方ミナ・同カヨコ・同アケ・同ヨシ、同春子の各審問結果を総合すると、前記認定のとおり、相手方ミナが相手方亡栄吉と婚姻したのは同女が二八歳に達した昭和二二年五月であつて、同女は小学校卒業直後から上記婚姻までの間約一四年間に亘り妹達の世話をしながら和夫の犠牲になつて黙々として家業の農業に従事してきたうえ、前記のとおり相手方亡栄吉と婚姻した後も長男である一太郎が上記のとおり死亡したこともあつてか、和夫の実質的後継者として和夫と同一世帯という従来のままの生活を続けたほか、和夫の指図に従つた形ではあつたが農業の一切を切盛りし、これに伴い、相手方亡栄吉も、元来は表具師で農業の経験がないのに相手方ミナと共に同農業に従事したほか、農閑期には表具師として他所で働き、その労賃の殆んどを和夫に提供したのに、和夫は同ミナ夫婦の生活を含む家計一切を管理していたため、和夫から少額の小遣いを貰うという生活を強いられていたこと、そんなことから上記栄吉は次第に和夫の上記態度に不満を持つようになつたが、和夫も栄吉の上記労賃の出し方が少ないものと邪推するようになつて、昭和二八年頃から、相手方ミナ栄吉夫婦と和夫の感情的対立が表面化するようになり、同三〇年になつて和夫は栄吉を自己の元からいびり出すように振舞い栄吉に対し暴力まで振うようになり、両者の関係は同一世帯での共同生活を続けることについては妥協することの余地のないまでに破綻するに至つたこと、そこで和夫と相手方ミナ・栄吉夫婦の対立関係を心配した親戚の山下幸二・山村広次・高石一郎・小川鉄夫らが、和夫と栄吉に対し両者が別世帯として独立した生活を営むことを前提に和解することを強くあつせんし、その結果同三一年四月一七日、相手方ミナ・栄吉一家は和夫と別世帯の独立した生活を営むことにし、他方和夫は同ミナ・栄吉一家の生活の基礎となるようにその当時所有していた農地の約四分の一に当る別紙目録三記載の土地とその地上建物を栄吉に贈与することの契約を書面で結び、その頃栄吉は和夫から同物件の引き渡しを受けたこと(尚同目録(1)・(4)の土地の登記簿上の所有者名義は相手方ミナとなつているが、その真実の所有者は和夫であつたため、和夫はこれを栄吉に贈与する物件の対象としたもの)、そして和夫死亡当時の同物件の価額は、同目録の当該物件評価額欄記載のとおりであるが、しかし上記贈与を受けた当時における同目録土地中の農地は、いずれもいわゆる泥田で、和夫所有の農地の中で最も収穫の悪い土地であつたことを認めることができ、したがつて以上の事実関係からみると、上記贈与は形式的には相手方亡栄吉に対する生計の資本としての贈与と云えなくもないが、むしろその実質の七割は相手方ミナ及び栄吉の和夫に対する寄与の代償として同夫婦の代表といえる栄吉にまとめてその所有権を移転したものとみるのが相当であり、結局栄吉の特別受益は金二八、七六〇、三五〇円の〇・三倍である金八、六二八、一〇五円となり、また以上の経緯からすると、このほか相手方ミナと同亡栄吉にこの外寄与分を認めるべき理由がないことも明らかである。尚相手方ミナの代理人は、別紙目録三記載の物件の所有権移転は、和夫の栄吉に対する不法行為の慰謝料の支払に代えてなしたものである旨主張するが、同主張を認めるに足る証拠はない。

五  和夫の相続人カヨコの特別受益及び寄与分関係

前掲農地法五条許可書、同鑑定人○○○○の鑑定結果(昭和四〇年一一月二五日と日付記載のもの)、同相手方ミナ・同カヨコ・同タケの各審問結果によると、相手方カヨコは、昭和三一年一二月頃和夫から別紙目録四記載の土地の贈与を受け、同物件の和夫死亡時における価額は同目録の評価額欄記載のとおりであるが、同土地は上記贈与を受けた当時は畑であつて現在のように埋立工事をして宅地にしたのは上記カヨコ自身であつたこと、同人は、昭和一〇年頃小学校を卒業するや約一年間家事の手伝いをしたうえ、その後約五年間他家で住込女中として働き、その間受けた毎月五円の手当の殆んどを父和夫に送金したほか、長男一太郎の死亡によつて生家に連れ戻されてから同二〇年八月現在の夫と婚姻するまでの約六年間和夫と同居して同人の経営する農業の手伝いをなしていたこと、したがつて上記贈与は、生計の資本としての特別受益というよりは全部相手方カヨコの和夫に対する寄与の代償とみるのが相当であり、その他相手方カヨコについてはこれを超える寄与分の存在の主張はない。

六  和夫の相続人アケの特別受益及び寄与分関係

前掲証人山村広次の証言・同相手方ミナ・同アケの各審問結果によると、相手方アケは、昭和一二年頃小学校を卒業してその後家事の手伝いをしていたが、和夫の経営する農業に本格的に従事したこともなく、むしろ習い事をさせてもらうなど他の姉妹に比して和夫に対し貢献するなどの事情がないまま同三一年暮頃、右和夫から独立生活のための資金として金四五〇、〇〇〇円の贈与を受けたこと、そしてこの金額は、当裁判所に顕著な全国消費者物価指数(昭和五〇年を一〇〇としてみると、昭和三一年は三〇・八、同三九年は四一・七)にしたがい和夫の死亡当時の価値で評価すると金六〇九、二五三円(450,000×41.7÷30.8)であることが明らかであり、その他寄与分についてはその主張及び存在を認めるに足る証拠はない。

七  和夫の相続人昭一・ヨシ・春子・クニエ・亡和代らの特別受益及び寄与分関係

前掲昭和四一年(家)第一八四六号遺産分割事件照会書に対する回答と題する書面、同昭和五五年四月五日付報告書と題する書面、同証人山下幸二の証言、同相手方ミナ・同ヨシ・同春子・同昭一・相手方クニエ(二回)の各審問結果を総合すると、相手方昭一及びヨシ夫婦は、前記二のとおり昭和三六年五月和夫らと別世帯を構成した後から現在に至るまで本件遺産である別紙目録二の(3)の建物に居住しているが、同人らは、和夫の生前中に同人の資産形成又はその維持に対し特段の貢献をしていないこと、したがつて本件遺産の分割に際しては右和夫と別世帯を構成してから和夫が死亡するまでの三年間にわたる上記建物の無償使用自体による利益は特別受益ともみることができるが、他方同昭一・ヨシは同建物を維持管理してきているのであるから、その他の遺産の管理状況に照らすと、上記使用自体による利益と同建物の維持管理費を相殺し同人らには特別受益が無いものとみるのが相当である。そしてそのほか相手方春子・クニエ・申立人亡和代らについては特別受益があつたものと認めるべき証拠はもちろんのこと和夫の遺産に対する寄与分を認めるべき証拠もない。

八  各当事者の想定遺産額に対する相続分及び具体的相続分に応じた相続額等

前記三の認定事実によると、本件相続開始時期を基準にした本件遺産の総価額は、金四六、二四一、七九七円であるが、民法第九〇三条第一項に従い同相続開始時に存在したであろう想定遺産の総額は、前記四(相手方亡栄吉に関する)及び六(相手方アケに関する)で認定した各特別受益を加算した金五五、四七九、一五五円であることが明らかであるから、これを基礎に被相続人和夫の相続人の想定遺産額に対する相続分を算定(円未満は四捨五入とする)すると、申立人亡和代は金一八、四九三、〇五二円(55,479,155÷3 = 18,493,052)、相手方亡栄吉は〇円(55,479,155÷12-8,628,105 = -4,004,843)、相手方アケは金四、〇一四、〇〇九円(55,479,155÷12-609,253 = 4,014,009)、相手方ミナ・同カヨコ・同クニエ・同ヨシ・同昭一・同春子はいずれも金四、六二三、二六三円(55,479,155÷12 = 4,623,263)となつて、遺産に対する具体的相続分(小数点以下五位下四捨五入で算出)は、申立人承継人君子・同リサ・同信夫・同良夫についてはそれぞれ一二五〇分の九二(申立人亡和代の想定遺産額に対する相続分18,493,052÷上記全相続人の想定遺産額に対する相続分の合計額50,246,639÷5)、申立人承継人文子・同忠夫についてはそれぞれ一二五〇分の四六(18,493,052÷50,246,639÷10)、相手方アケについては一二五〇分の一〇〇(相手方アケの想定遺産額に対する相続分4,014,010÷50,246,639)、相手方ミナ・同カヨコ・同クニエ・同ヨシ・同春子・同昭一についてはそれぞれ一二五〇分の一一五(同人らの各想定遺産額4,623,263÷50,246,639)となり、相手方亡栄吉承継人ミナ・同夏子・同秋雄・同幸夫の相手方亡栄吉からの承継分は〇となること明らかであるから、遺産分割の公平を期する必要上次いで三で認定のとおり明白となつた現在時点における総遺産額二八二、九七五、三四〇円に対する相手方亡栄吉承継人を除くその余の各相続人の具体的に取得すべき相続分額を決定すべきところ、各当事者は、本件手続において本件被相続人和夫の遺産のほかに更に同和夫の死亡後その遺産から生じた賃貸料である収益金(果実)の分配をも求めるので、先にこの点につき検討すると、同収益金は、本来遺産そのものではないが、いずれにしろ遺産の分割があるまでは相続人が共有している状態にある遺産から生ずる果実であること明白であるから、民法第二五九条の趣旨により本件遺産分割の手続に組入れてできるだけ清算すべきものと解するを相当とする。

そこで以下以上の理由にしたがいその収益金の存否につき判断するに、昭和四一年八月一八日付調査報告書・同四一年(家)第一八四六号遺産分割照会に対する回答と題する書面・同四二年一〇月二九日付引継書と題する書面・同四四年一月一九日及び同年四月一四日付引渡書と題する各書面・同四六年一〇月一日付計算書と題する書面・同四四年四月一五日付同四五年一二月一〇日付同四六年八月三日付同四七年二月七日付同五三年三月一四日付・同五四年一二月二八日付(二通)報告書と題する各書面・同四七年一月二八日付上申書と題する書面・同四七年三月一五日付及び同五三年三月一四日付各審判書・同五三年三月一六日付供託事件についてと題する書面・同五五年一月九日付電話聴取書、前掲昭和五五年四月五日付報告書と題する書面、証人小谷一政の証言・申立人承継人リサ・同君子・相手方春子・同昭一の各審問結果を総合すると、別紙目録二の(1)・(2)・(4)・(5)の各建物はいずれも和夫の生前からアパート等として他に賃貸し、同人の死亡後である昭和三九年五月二八日以降主として本件申立人和代が管理していたものの、同四〇年一月から相手方である昭一が上記和代に替つて管理し、昭和四二年九月一一日当裁判所によつて弁護土である××××が遺産管理者として選任されてからは現在に至るまで同管理者がその管理の掌に当り、同管理者において、上記のとおり相手方昭一から引継ぎを受けた賃料等と自から徴収した賃料等から相続財産に関する費用として民法第八八五条第一項にしたがい支弁すべきを相当とする管理費用(相続財産の保存に必要な費用・賃料徴収等に必要な管理経費・租税公課)及び当裁判所の審判によつて支出を命じた遺産管理者に対する報酬並びに同法条に定める費用ではないが本件全当事者の合意にもとづいて支出された本件手続費用としての鑑定費用(鑑定人○○○○に対し昭和五三年三月六日支給決定のあつた金七六〇、〇〇〇円)を控除して昭和五四年一二月二八日現在で管理保管する収益金は、預金利息をも含めて金四、九四九、五〇六円であるが、昭和五五年三月三一日現在で本件当事者全員に配分可能な収益金は、同金額から、賃借人に返還が予定されている敷金一五八、四〇〇円・昭和五三年四月から同五五年三月までの管理経費一二〇、〇〇〇円(一ヵ月五、〇〇〇円)・本件遺産に対する昭和五四年度四期分固定資産税三四九、〇〇〇円を控除した残金四、三二二、一〇六円であること、しかし相手方昭一は、昭和四〇年一月分から同四二年九月分までの賃料として合計金四、七七〇、六〇〇円を集金して管理費用等を控除してもその純収入金四三八、九六〇円を利得し(相手方昭一は自から管理報酬を取得しながら更に傭人の給料及び相手方ヨシ及び春子の生活費として同金額を消費したからこれは管理費用として当然控除されるべきであると主張するがその理由がないので)ているほか、昭和四四年一〇月から同四六年九月までの間に合計金二、五八〇、七〇〇円の賃料を集金し、そのうち相当と認められる管理費用一、〇五四、三九〇円を控除してもなおその残金一、五二六、三一〇円を利得している筈であり(相手方昭一はこれに関しても上記費用のほかに傭人費一二〇、〇〇〇円を管理費用に加え控除すべきことを主張しているが、自己の報酬の外に特段に控除されるべき事由が認められないのでその主張を採用しないことにする)、そしてまたこの外に同人は、別紙目録二の(4)の建物に入居していた上野安夫に対し賃料増額の請求をなしその額に紛争が生じた際、同上野が昭和四一年二月から同四八年九月までの間に合計金七四四、〇〇〇円の賃料供託をしたところ、同四七年四月から同四八年八月までの間に合計金七〇四、〇〇〇円の還付を受け利得している筈であるのに、そのいずれをも前記遺産管理者に引渡しをしていないことが認められるから、これらの合計金二、六六九、二七〇円については相手方昭一は本件遺産分割の際他の当事者に対しその具体的相続分に応じて清算支払いをなすべきであること、他方、申立人和代と相手方春子は、和夫の死後も同居生活を続け、昭和三九年六月から同四二年九月までの間に前記賃料のうち一人当り金一、〇〇〇、〇〇〇円両各で合計金二、〇〇〇、〇〇〇円を費消しているのでこれも上記同様清算支払いをなすべきものであると(以上のほか相手方ミナ・ヨシの各審問結果によると、相手方ヨシは和夫の死亡後の昭和四二年頃○○土地改良区から和夫宛に送られてきたデパート商品券九四、四〇〇円を受領しその頃費消したとのことであるが、その趣旨必ずしも判然としないので本件遺産から生じた果実とみないことにし、また前記のとおり相手方昭一・ヨシは和夫の死亡後も引続いて現在に至るまで別紙目録二の(3)の建物に居住し、この間の昭和四二年九月末頃からは相手方春子も上記両名と同居しているので、前記のとおり本件遺産から生ずる収益全部を本件遺産分割の際清算すべきものとする限り、建物使用に対する賃料相当金の利得あるものとして清算の対象にすべきではあるが、前記七と同趣旨でその利得無しとみるを相当とする)認めるべきで、そうすると、分配されるべき収益金の総額は結局金八、九九一、三七六円となること明らかである。

したがつて以上にしたがい、本件遺産分割の手続においての被相続人和夫の遺産に対する各当事者の具体的相続分額と上記収益金に対する同様の分配額(以下具体的算出については円未満四捨五入とする)を検討すると、上記事実によれば、申立人承継人君子・同リサ・同信夫・同良夫については、いずれも相続分額につき金二〇、八二六、九八五円(282,975,340×92÷1250)・収益金の分配取得すべき額につき金四六一、七六五円(8,991,376×92÷1250-申立人亡和代の消費金200,000)、申立人承継人文子・同忠夫については、いずれも相続分額につき金一〇、四一三、四九三円(282,975,340×46÷1250)・収益金の分配取得すべき額につき金二三〇、八八二円(8,991,376×46÷1250-申立人亡和代の消費金100,000)、相手方ミナ・同クニエ・同カヨコ・同ヨシについては、いずれも相続分額につき二六、〇三三、七三一円(282,975,340×115÷1250)・収益金の分配取得すべき額につき金八二七、二〇七円(8,991,376×115÷1250)、相手方アケについては、相続分額につき金二二、六三八、〇二七円(282,975,340×100÷1250)・収益金の分配取得すべき額につき金七一九、三一〇円(8,991,376×100÷1250)、相手方春子については、相続分額につき金二六、〇三三、七三一円(282,975,340×115÷1250)・収益金の分配取得すべき額につきマイナス金一七二、七九三円(8,991,376×115÷1250-春子の消費金1,000,000)、相手方昭一については、相続分額につき金二六、〇三三、七三一円(282,975,340×115÷1250)・収益金の分配取得すべき額につきマイナス金一、八四二、〇六三円(8,991,376×115÷1250-昭一の消費金2,669,270)となること明らかである。

九  具体的遺産分割の方法

そこで最後に和夫の遺産に対し各当事者が具体的に分割取得すべき物件と果実である収益金の分配取得額の確定及びこれに伴つて生ずる清算調整のため家事審判規則第一〇九条によつて認められている債務負担金につき前記三で認定した事情(本件和夫の遺産の分布・利用の状況)その他遺産の分割取得に伴つて生ずる清算金をできるだけ少額にとどめるべきであることなど一切の事情を考慮して決定することにすると、

1  申立人承継人君子・同リサ・同信夫に対しては、いずれも別紙目録一の(15)・(16)の土地及び同目録二の(4)・(5)の建物を各自平等の持分をもつて共有取得させることとし、そうすると同人ら各自のそれに伴つて生ずる取得額二一、三二五、九三三円(取得物件の時価合計額に各自の持分を乗じて算出、以下共有取得者の取得額については同様の方法で算出し円未満は四捨五入とする)から同人ら各自の前記相続分額二〇、八二六、九八五円と分配取得すべき収益金四六一、七六五円の合計金二一、二八八、七五〇円を控除した残金三七、一八三円をいずれも利得することになるから、同利得分は後記のとおりその取得額の不足者となる相手方アケの調整金に対する充当として同人らに清算支払いをさせることにし、

2  申立人承継人良夫・同文子・同忠夫・相手方ヨシ・同春子・同昭一に対しては、いずれも別紙目録一記載の(10)ないし(14)・(17)の土地を、その持分につき、上記良夫は一〇〇〇分の一七五(同人の相続分額を同上人全員の合計相続分額で除して算出し、以下同様の方法により少数点以下三位未満四捨五入で算出することにする)、同文子・同忠夫はいずれも一〇〇〇分の八七、同ヨシ・同春子・同昭一はいずれも一〇〇〇分の二一七の各持分をもつて共有取得させることとし、そうすると上記良夫のそれに伴つて生ずる取得額二一、二二九、五八六円については同人の前記相続分額二〇、八二六、九八五円と分配取得すべき収益金四六一、七六五円の合計金二一、二八八、七五〇円より五九、一六四円不足し、同文子・同忠夫それぞれの同様の各取得額一〇、五五四、一三七円のいずれについても同人らの前記相続分額一〇、四一三、四九三円と分配取得すべき収益金二三〇、八八二円の合計金一〇、六四四、三七五円より九〇、二三八円不足し、また上記ヨシのその取得額二六、三二四、六八七円についても同人の前記相続分額二六、〇三三、七三一円と分配取得すべき収益金八二七、二〇七円の合計金二六、八六〇、九三八円より五三六、二五二円不足することになるので、これらはいずれも調整金として後記のとおり超過取得者となる相手方昭一からの支払いを受けさせるようにし、他方上記春子の上記物件取得によると、これに伴つて生ずる取得額二六、三二四、六八七円については、同金額から同人の前記相続分額二六、〇三三、七三一円と分配取得すべき収益金マイナス一七二、七九三円の合計金二五、八六〇、九三八円を控除した残金四六三、七四九円を利得することになるから、同利得分は後記のとおりその取得額の不足者となる相手方アケの調整金に対する充当として同人に清算支払いをさせることにし、

3  相手方ミナ・同カヨコ・同クニエに対しては、別紙目録一記載の(1)・(2)・(5)・(6)の土地を各自平等の持分をもつて共有取得させるほか同カヨコに対しては更に同目録一記載の(3)の土地を単独取得させることとし、しかも同人ら各自のそれに伴つて生ずる取得額二五、七六六、一五〇円は、同金額から同人ら各自の前記相続分額二六、〇三三、七三一円と分配取得すべき収益金八二七、二〇七円の合計金二六、八六〇、九三八円と比較するとこれを控除した残金一、〇九四、七八八円分が不足することになるから、いずれもその調整金として同人らに対しては前記遺産管理者の保管する収益金から同不足分だけの金額を分配取得させることにし、

4  相手方アケに対しては、別紙目録一記載の(4)・(7)・(8)・(9)の土地を単独取得させることにするが、同人のそれに伴つて生ずる取得額一八、四五七、一七〇円は、同人の前記相続分額二二、六三八、〇二七円と分配取得すべき収益金七一九、三一〇円の合計金二三、三五七、三三七円より金四、九〇〇、一六七円不足となるから、同不足分に対しては、調整金として、前記遺産管理者の保管する収益金のうち金一、〇三七、七四二円を分配取得させたうえ、上記のとおりの申立人承継人君子・同リサ・同信夫の各清算金三七、一八三円、相手方春子の同金四六三、七四九円と後記のとおり超過取得者となる相手方昭一から同清算金三、二八七、一二七円以上合計金三、八六二、四二五円の支払いを受けさせることにし、

5  相手方昭一に対しては、上記のほか、別紙目録二記載の(1)ないし(3)の建物及び同目録六記載の電話加入権を単独取得させることとし、同物件の取得に伴つて生ずる合計取得額二八、二五四、六八七円と前記相続分額二六、〇三三、七三一円及び分配取得すべき収益金マイナス一、八四二、〇六三円の合計金二四、一九一、六六八円とを比較してみると、同人は上記物件を取得することに伴つてその差額四、〇六三、〇一九円を超過取得することになるから、上記のとおり申立人承継人良夫に対しその内金五九、一六四円を、同文子及び忠夫に対しそれぞれ各内金九〇、二三八円を、相手方ヨシに対し内金五三六、二五二円を、相手方アケに対しその残金三、二八七、一二七円を同人らに対する調整金として清算支払いをさせることにするが、他方相手方昭一は敷金を支払つた賃借人等が使用する建物の取得者となつたから、同人に対しては、敷金返還債務の承継者として遺産管理者が管理保管する収益金のうち昭和五四年一二月二八日現在で管理保管している敷金分金一五八、四〇〇円を取得させるを相当とするほか、上記取得建物の所有を保障する目的で本来ならその敷地所有者に対する賃借権を認めるのが相当であるところ、現在その相当賃料を定めるべき資料がないので、同賃借権設定までのつなぎとして、家事審判規則第一一〇条を適用し、同建物の敷地の持分所有者である申立人承継人良夫・同文子・同忠夫・相手方ヨシ・同春子に対し、相手方昭一のために別紙目録一記載の(10)ないし(14)の土地をその持分にしたがい本審判確定の日から五年間無償で使用させる義務を負担させ、相手方昭一に対してはその権利を取得させるのが相当というべきである。

一〇  結論

よつて以上の理由にしたがい、本件和夫の遺産とそれから生じ現に遺産管理者において保管する収益金は前記九のとおり分割(使用賃借の負担付部分も含む)分配することとし、それに伴つて生ずる調整金の支払いについては、申立人承継人君子・同リサ・同信夫は相手方アケに対しいずれも金三七、一八三円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金を、相手方春子は相手方アケに対し金四六三、七四九円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで上記同様の遅延損害金を、相手方昭一は、申立人承継人良夫に対し金五九、一六四円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで上記同様の遅延損害金を、同文子及び忠夫に対しいずれも金九〇、二三八円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで同様の遅延損害金を、相手方ヨシに対し金五三六、二五一円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から完済まで同様の遅延損害金を、それぞれ支払わせることにし、本件手続費用については、家事審判法第七条・非訟事件手続法第二七条にしたがい、証人山下幸二に支給した分は相手方ミナ、同金実に支給した分は相手方昭一、鑑定人○○○○・同○○○○(但し同○○○○に支給した分のうち金七六〇、〇〇〇円は、前記八のとおり遺産管理者の保管する収益金から支払済であるので、ここでは、収益金に対し分配請求ができないようその負担部分を定めるものである)に支給した分のうち、その一二五〇分の三六八の部分は申立人承継人君子・同リサ・同信夫・同良夫においていずれも平等の割合で、その一二五〇分の九二の部分は申立人承継人文子・同忠夫においていずれも平等の割合で、その一二五〇分の六九〇の部分は相手方ミナ・同クニエ・同カヨコ・同ヨシ・同昭一・同春子においていずれも平等の割合で、一二五〇分の一〇〇の部分は相手方アケにおいて、それぞれ負担し、その余は各自の負担とすることにし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 藤枝忠了)

別紙目録〈省略〉

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